本学の卒業生で、2025年12月2日のニュースリリースで研究成果を発表した薬物動態学分野の
河渕 真治助教。現在の研究内容や教育・研究活動の様子、また本学へ入学した理由や学生時代のお話も伺いました。
ーリリースした研究内容について
2019年に本学の海外協定校である国立台湾大学で、お互いの研究を紹介し、情報交換をする機会がありました。この機会を得られたのは、両大学がこれまで良好な関係を築いてきたからこそであり、関係者の皆さまに心から感謝しています。そのとき、双方の大学が持つ技術や知識を組み合わせれば、もっと良い研究ができるのではないかと考え、国際共同研究を立ち上げました。コロナ禍で思うように研究が進まない時期もありましたが、2025年12月のリリースで成果を発表することができました。
心筋梗塞という病気は、心臓の血管が詰まって血液が流れなくなることで、心臓の筋肉が傷んでしまう状態です。血流が止まったまま時間が経つと、その部分の心筋細胞は死んでしまいます。一度壊死してしまった心筋細胞を元に戻す薬は、今の医療にはありません。そこで私たちは、ヒトの幹細胞が出す「分泌液」に注目し、これを使用して心臓の細胞を回復させることができないか研究を行ってきました。細胞を培養するときに「酪酸」という化合物を加えると、幹細胞の分泌機能が強化されることがわかりました。さらに、この分泌液を、心筋梗塞を起こしたラットに投与したところ、心臓への血流量が増加することも確認できました。また、この分泌液には抗がん剤の副作用である心臓へのダメージ(心毒性)を抑える効果もあることがわかりました。今後は、心疾患とがん治療の両方で、新たな治療法の開発に向けた研究を進めていきます。
今回の国際共同研究を通じて得た成果や経験を生かして、薬が体内でどのように動くのか(薬物動態)を調べる研究と組み合わせた新たな研究領域の開拓にも積極的に挑戦したいと考えています。特に、抗がん剤を中心に、どのような患者さんに、どれくらいの量を、どのタイミングで、投与するのが適切なのかを明らかにし、より良い治療法の開発につなげていきたいです。

ー1日のスケジュールや日々の過ごし方を教えてください
日によって異なりますが、感覚としては研究6:教育3:大学運営1ぐらいの比率でしょうか。自身の研究だけでなく、授業や研究室の学生への指導、合間に論文作成や学会発表準備なども行っています。外部での講演や他大学で講師をすることもあって、薬学の発展に貢献できるよう努めていきたいと思っています。
休日は子どもたちと遊ぶことが多く、家族で過ごす時間が一番のリフレッシュになっています。

ー本学に入学された理由を教えてください
自分では覚えていませんが、母曰く、小さい頃から医者になりたいと言っていたようです。病院にかかることが多かったこともあり、小学生のときには将来の夢は「お医者さん」になっていました。そして中学生のときに、ふと、病気などを治療するときに欠かせないものは“薬”だと気が付いたことを今でも覚えています。診断や処置は医者ですが、治療薬や麻酔薬を取り扱う専門は薬剤師だということを認識し、それからは薬学部を目指すようになりました。
四国地方の出身なので近畿地方や中国地方で進学先を検討したときに、私立の中でも研究のレベルが高かったことが決め手となり、本学を志望しました。実際に入学してみて、本当に研究のレベルが高いと感じましたし、多様な分野に卒業生が多いということも様々なつながりのきっかけになり、入学してよかったと思っています。
ー研究者・教員を目指したきっかけ
3年次生のときに学んだ「薬物動態学」がとても面白くて、研究をしたいと思いました。中学・高校で習った数学を用いて体の中での薬の動きを捉えることができるということに驚きましたし、他の医療系学部に比べて、1年かけてじっくり薬物動態学が学べることが薬学部の魅力ですよね。
研究が好きだったので、もともと大学院の修士課程へ進学したいと思っていましたが、本学の大学院か他の大学院へ進むか、ということは悩んでいました。それでも本学の研究環境が充実していたのでこのまま研究したいと思い、大学院へ進学し、修士課程修了後は企業に就職するつもりでした。ですが、修士課程1年のときに研究の成果をまとめて論文を書く機会をいただき、それが大変ながらも楽しかったこと、論文を公表できたときの達成感からもっと研究を続けようと思い、博士課程へ進学し、大学教員を志すようになりました。周りの先生や同期、先輩や後輩など周りの人のサポートのおかげで今の自分がいると感じていて、環境に恵まれていることを実感しています。
ー大学生活で印象に残っていることはありますか?
学部生のときはバスケットボール部に所属していて、学業もクラブ活動も楽しかったですね。また研究室配属後にコミュニティがすごく広がったと感じました。同期だけでなく先輩・後輩、卒業生とのつながりがどんどん広がり、それが自分の視野を広げることにもつながりました。
大学院では研究中心の生活に変わり、その中でも特に濃かったのは修士課程1年の時ですね。大変なこともありましたが、研究者としての基本をみっちり学びましたし、朝から晩まで研究に取り組んでいたので、手技や考え方のアプローチだけでなく、メンタル面でも成長させてもらったと思っています。当時の先輩、同期、後輩とは今でも連絡を取り合っています。また、夏休みの1ヶ月間、カナダのバンクーバーに語学留学に行く機会もいただき、海外の人と英語で話す度胸をつけることができました。振り返ってみると今までの経験や出会いがすべて今の自分につながっていると思います。

ー今後の目標について
1人の研究者としては、国際共同研究も含めて多様な視点から研究を進めていきたいと思っていて、将来的には治療ガイドラインだけでなく、1人1人の患者さんの経過や予後を予測し、ベストな抗がん剤治療が提案できるような仕組みを作りたいと思っています。
教員としては、薬学部だけでなく他の医療・理工系学部でも研究技術はどんどん進化しています。だからこそ、ただ国家試験に合格して薬剤師の資格を取るだけでなく、広い視野を持ち、自分で考えて提案できるような薬剤師を育てることが重要と感じています。AIに頼るだけでなく、自分の頭で考え、判断できる力を身につけてほしいと思っています。次世代の医療において薬学は欠かせない存在です。薬学の発展に貢献できるよう、これからも学生の皆さんや先生方と取り組んでいきたいと思っています。
ー本学志望者へメッセージ
本学に入学してからずっと感じていることですが、研究のレベルも高いですし、先生方もカリキュラムをこなすだけでなく、薬学の将来を考えて教育活動に取り組んでいると感じています。国家試験のためだけでなく、プラスアルファを身につけられることが本学の魅力だと思います。卒業生の方も多いですし、いろいろな面でサポートがあります。つながりも広がりますね。
大学院に関しては、学部の頃から研究してきた場所で一貫して学ぶことができるということが魅力ですし、ぜひ本学の大学院に進学してくれる学生が増えたらいいなと思います。自分の時にはありませんでしたが、今は奨学金制度も充実しているので、研究者としての能力を身につけたい方はぜひ進学も検討してください。
2025年12月2日ニュースリリース
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