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実務実習を経て、海外での医療ボランティアへ挑戦
6年次生 牧野 裕佳さん【インタビュー】New

1人で海外に行き、集まった仲間と医療ボランティアに挑戦した6年次生の牧野まきの 裕佳ゆかさん。ボランティアに参加したきっかけや、活動の中で印象に残っていることについてインタビューしました。

ーボランティア内容を教えてください
 カンボジアにて約3週間、医療ボランティアに参加しました。アメリカや欧州諸国から集まった医師・看護師、そして私を含む学生6名ほどの国際混合チームで構成され、貧困地域の学校や孤児院、地域施設を訪問しながら、公衆衛生の啓発活動に取り組みました。
 特に力を入れたのが、子どもたちへの口腔衛生指導です。甘いものを好む文化が根づく一方で、歯磨きの習慣が十分に普及していないことから、虫歯の罹患率が非常に高い状況でした。そこで私たちは現地の言語であるクメール語を用いて自作したポスターや教材を活用し、歌やクイズを取り入れながら、歯磨きの方法やタイミングを子どもたちと保護者に楽しく伝えました。

 また、活動の一環として国立病院へ見学に行き、医療が十分に届かない現状を自分の目で確かめる機会もありました。入院中の食費が払えないことが原因で入院患者への食事提供がないことやICUにすらベッド間の仕切りがないこと、薬の費用がすべて自己負担であることなど、日本では想像もできない医療環境を目の当たりにしました。ただ支援するだけでなく、まずは現地を知ることから始める大切さを改めて感じた3週間でもありました。

ーボランティアを始めたきっかけ
 きっかけは5年次の実務実習での経験でした。患者様から直接「ありがとう」と感謝の言葉をいただいたとき、「今の自分でも誰かの役に立てる」と実感し、嬉しく思ったことを今でも覚えています。さらにもっと多くの人に貢献したいと思うようになり、「医療を最も必要としている場所」で自分の力を試したいと考えました。もともと海外への興味や発展途上国の医療体制への関心もあったことから、自分の視野を広げる意味でも、挑戦するなら今しかないと考え、カンボジアでの医療支援に踏み出しました。
 人のために何かしたいと思い参加したボランティアではありましたが、現地の人たちの強さや優しさに触れて、逆に元気をもらったり、新しい価値観を得ることができ、意味のある挑戦ができたと思っています。

ー活動で印象に残っていることはありますか
 現地の医療環境にまず衝撃を受けました。食費が払えない入院患者には食事の提供はなかったり、家族が病院の床で寝泊まりしていたり、さらには薬の費用はすべて自己負担という状況でした。たとえ命に関わる状況であっても、お金がなければ治療が受けられないことが現実でした。
さらに、毎日のヘルスチェックの中で出会った糖尿病患者の場合、血糖値は600を超え、足の壊死も進行していました。日本なら即入院レベルの状態だったので、現地の医師に大丈夫なのか尋ねると、「医療の基準は同じでも、この環境ではそれに沿うことができない。」と返答があり、自分がもっていた医療の常識が通用しないことに驚きました。
 医療の周辺には、教育・保険・インフラ・経済といった、さまざまな社会的課題が複雑に絡んでいることをこの時に実感しました。しかし、それでもできることはあると信じて取り組んだ歯磨き指導では、子どもたちが「今日は歯を3回磨いたよ!」と笑顔で教えてくれたり、保護者が「甘いジュースを控えようと思う」と行動を変えてくれたりと、小さな変化が確かに起きていました。
 与えるつもりでいた私が、日本との環境の違いに一度は落ち込みましたが、現地の人々のたくましさや温かさに励まされた経験は、私の生き方をも変えるような大きな転機となったと感じています。

     

ー学業との両立は?
 「今すべきこと」を明確にし、ひとつの課題に集中して取り組むことを意識しています。終えたらすぐに気持ちを切り替えることで、メリハリを持って取り組むようにしています。今回のボランティア活動も、5年次の実務実習が終了し、長期休暇に入ったタイミングで参加しました。また、アルバイトやピアノの習い事とも両立しており、日々の時間の使い方を意識して行動することが大切だと感じています。

ー本学に入学した理由
 幼い頃から医療に興味があり、医療ドラマを見て「人を助ける仕事はかっこいい」と思ったのが原点です。中でも薬の奥深さや、治療の根幹を支える重要性に魅力を感じ、薬学の道を志しました。
 入学後、3年次で研究室に配属されたことも大きな転機となりました。行動力のある同期に囲まれ、カンボジアでのボランティア挑戦を後押ししてもらうなど、刺激と支えに満ちた環境に身を置くことができ、京薬に入学して本当に良かったと実感しています。

ー将来の夢、今後の目標を教えてください
 カンボジアでの経験を通じて、発展途上国では日本で普及している薬が十分に行き渡っていない現状を知りました。薬の流通や医療アクセスの課題について考えるようになり、薬学の専門性を土台にしながらも、その枠を超えて広い視野で貢献できる人材を目指したいと思うようになりました。専門知識を活かしつつ、現場で感じた課題に向き合い、より多くの人の役に立てるような取り組みに挑戦していきたいと考えています。

ー本学志望者へメッセージをお願いします
 薬剤師は、専門的な知識をもとに多くの人に頼りにされる責任ある職業です。その学びの第一歩として、薬学部は非常に実りある環境です。
 ただし、「薬」という枠組みにとらわれすぎると視野が狭くなることもあります。薬学の中にも多様な選択肢があり、在学中にはアルバイトやボランティアなど、学外での経験を通じて自分の可能性を広げることも大切です。ぜひ、学生時代にしかできない挑戦を通じて、自分なりの道を見つけてください。


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