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生薬から臨床応用につながる研究を目指して大学院へ
博士課程1年次生 荒木 康佑さん【インタビュー】New

学部卒業後、就職と迷いながらもより知識を深めるために大学院へ進学した荒木あらき 康佑こうすけ さん。大学院1年次生ならではの目線で学部生時代の経験や現在の研究活動についてお話していただきました。

ー本学に入学し、大学院へ進学した理由について
 高校生の時に、大学へ行くなら多くの知識を得たいと漠然と考えていました。たまたま本学の資料を見たときに、農学部や理学部などの学修範囲も含めて幅広く学べると記載があったことや国家資格がとれるということで薬学部を志望しました。京薬は定員360名と西日本でも最大級であり、OB・OGとのつながりや歴史があることが決め手となり、入学しました。
 3年次生になって研究室を考える際に、たまたま生薬学分野を見学し、後日お礼とともに疑問に思ったことや考察したことを中村先生にメールしたところ、とても丁寧な回答を返信してくださいました。その後、研究背景や今後の展望など、気が付いたら10ラリー以上やり取りしていたことを覚えています。先生からしたら配属するかどうかも分からない学生に何度も質問されて大変だったかもしれないですが、このやり取りがきっかけで「生薬学って面白いな」と思うようになりました。分野配属後、実験や先生との議論、学会発表などを通じてさらにこの分野が好きになりました。5年次生では製薬企業のインターンシップにも参加していましたが、「もっと研究したい」という気持ちが強かったため、 大学院進学を決めました。あの時の中村先生とのやり取りがなかったら、大学院には進学していなかったかもしれないですね。

ー大学院での学びについて
 4月に大学院へ進学したばかりですが、講義がより専門的な内容になっていると感じます。例えば、学部ではレポート課題に取り組む際にインターネットで手軽に手に入れた情報を利用することが多かったですが、大学院では原著論文など根拠が確立したものを元にレポートを作成するということが大きな違いですね。選択科目によっては自分の研究している分野以外の論文に触れることにもなり、知見を広げることにつながります。大学院講義は研究者のベースになるようなカリキュラムになっていると感じています。
 研究活動では、研究計画は基本的に自分で考えて進めていますが、実験をうまくデザインできていなかったり、多角的な考察ができていないことがあるので、定期的に先生に相談して助言をいただいています。忙しい中でもじっくり話を聞いてくださるので、熱い議論になることもあり、とても充実しています。

     


ー大学生活について
 学部生のときは陸上部に所属していました。コロナ禍の影響であまり活動はできませんでしたが、引退後に同期とリレーマラソンに参加したり、10月にも新潟マラソンに同期8人と参加する予定です。自分以外は全員就職していますが、卒業後もこのような繋がりができているので、クラブに入ってよかったと思っていますし、違う世界の話を聞くことでお互いに良い刺激になっています。
 大学院へ進学してからは研究室にいる時間が長くなり、朝は8:30頃に来て夕方まで実験をメインに行っています。夕方以降は文献調査、学会の準備、学部生のサポートもしています。学部生からの質問がきっかけで自分では思いつかなかった視点に気づかされることもありますし、先生を含めた分野全体の雰囲気がとても良いと感じています。
 様々な学会にも参加させてもらっていて、学部生のときは5回、大学院生では今のところ3回参加しています。先日は農学がメインの学会に参加したのですが、薬学とは全く違う視点からの質問があり、返答に詰まることが多かったので、まだまだ勉強が必要だなと感じました。

     


ー現在の研究テーマ
 学部生の時とはテーマを変えていて、現在は「薬用植物由来酵素を利用した新規有用化合物の創製」に取り組んでいます。植物酵素を得るためには一般的にかなりの時間、労力が必要となるため、現在は特にその過程を簡便化する手法の確立に挑戦しています。また、有機合成実験も並行して行っています。最終的に、独自に合成した化合物と植物酵素を反応させ、新規性と機能性を兼ね備えた化合物を創り出すことで医薬品ライブラリーをさらに拡充したいと考えています。医薬品のもととなる多彩な有用化合物を創出することで製薬企業が尽力している新薬の開発に貢献したいと思っています。

ーこれまでの研究で印象に残っていることや苦労した点
 先日、1ヶ月うまくできなかった実験がやっと成功しました。試行錯誤することは楽しいですし、実験がうまくできると達成感もありますが、精神的に少ししんどくなるときもあります。平常心を保って、ぶれずに一定のペースで淡々とこなしていくスキルが研究者として必要だと実感しています。
 大学院生ならではの苦労というと、日本学術振興会特別研究員の申請書類は特に大変でした。研究支援を目的としているので、申請書の限られたスペースの中で自分の研究の新規性や社会的意義を分かりやすくアピールしなければならず、そのために図も作成するのですが、自分はそこにかなり苦戦しました。十数回先生に添削していただき、研究活動と並行するために睡眠時間も削りながらやっと作成し、今は結果を待っている状況です。研究を進めていくためには助成金の獲得が必要であり、そのための書類作成も研究者の第一歩だと感じました。


ー今後の目標・夢は?
 自分が主体的に関わって創り出した化合物を新薬の開発へとつなげ、最終的に市場に届けるということが目標です。様々な学会に参加するなかで、医師や獣医師の先生方と研究について議論させていただく機会や、基礎研究と応用研究の双方で活躍されている先生のご講演を拝聴する機会があり、より臨床応用を意識するようになりました。臨床におけるニーズを常に考えながら、新薬の開発に関わることができるような研究者になりたいと思っています。

ー本学志望者(学部・大学院ともに)へメッセージ
 本学では幅広い知識を学ぶことができるだけでなく、早期から研究活動に取り組むことができます。研究活動を通じて主体性や論理的思考力、ディスカッション力などたくさんのスキルを身につけることができますし、低年次での基礎的な講義、実験や実習などは大学院へ進学した今でも必要不可欠だと感じています。ぜひ本学で自分のテーマを見つけて、研究しましょう!
 在学生の方でこれから研究室を選択する方は、ぜひ研究室見学へ行く前にその分野について事前に調べることをおすすめします。どんなことでもいいので、分からないことや疑問に思ったことを先生にぶつけてみてください。きっと先生方はご自身の研究について熱く語ってくださると思います。
 すでに分野に配属されている学生の中には研究活動を頑張っている方がたくさんいると思います。大学院生になると自分の研究に対してプレッシャーもかかってくるので、ぜひ学部生の間に研究活動に没頭して、思う存分研究を楽しんでほしいと思います。

 そして、本学は研究設備が充実していて、大学院の進学者数も多いので切磋琢磨して成長できる環境が整っています。卒業後の進路を考えたときに就職活動もしましたが、もっと研究をして知見を広げたいと思って最終的には大学院への進学を決めました。ぜひ本学大学院も検討してみてください。


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